■ 成年後見
■ 「法定後見制度」とは
1.「法定後見制度」とは |
「法定後見制度」とは、精神上の障害により既に判断能力が低下した方々を支援することを目的として、ご本人・配偶者・4親等内の親族・市区町村長等が、家庭裁判所に対し、成年後見開始の審判等の申立てを行い、家庭裁判所の審判により、成年後見人等が選任され、成年後見等が開始される制度です。
【 後 見 】
ご本人の判断能力 | 全くない(日常的に必要な買物も自分ではできず誰かに代わってやってもらう必要がある程度) |
申立てについてのご本人の同意の要否 | 不 要 |
医師による鑑定 | 原則として必要(家事事件手続法第119条第1項) |
成年後見人に与えられる同意権・取消権 | 日常の買物などの生活に関する行為以外の行為(民法第9条) |
成年後見人に与えられる代理権 | 財産に関する全ての法律行為(民法第859条第1項) |
【 保 佐 】
ご本人の判断能力 | 著しく不十分(日常的に必要な買物程度は単独でできるが、不動産、自動車の売買や自宅の増改築、金銭の貸し借り等、重要な財産行為は自分ではできないという程度) |
申立てについてのご本人の同意の要否 | 不 要 |
医師による鑑定 | 原則として必要(家事事件手続法第133条、第119条第1項) |
保佐人に与えられる同意権・取消権 | ①元本を領収し、または利用すること ②借財または保証をすること ③不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること ④訴訟行為をすること ⑤贈与、和解または仲裁合意をすること ⑥相続の承認もしくは放棄または遺産の分割をすること ⑦贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、または負担付遺贈を承認すること。 ⑧新築、改築、増築または大修繕をすること ⑨民法第602条に定める期間を超える賃貸借をすること (民法第13条第1項) |
保佐人に与えられる代理権 | 申立ての範囲内で家庭裁判所が定める特定の法律行為(ご本人の同意が必要)(民法第876条の4第1項、同第2項) |
【 補 助 】
ご本人の判断能力 | 不十分(重要な財産行為は、自分でできるかもしれないが、できるかどうか危惧があるので、本人の利益のためには誰かに代わってやってもらったほうがよい程度) |
申立てについてのご本人の同意の要否 | 必 要(民法第15条第2項) |
医師による鑑定 | 原則として不要 |
補助人に与えられる同意権・取消権 | 申立ての範囲内で家庭裁判所が定める特定の法律行為(ご本人の同意が必要)(民法第17条第1項、同第2項) |
補助人に与えられる代理権 | 申立ての範囲内で家庭裁判所が定める特定の法律行為(ご本人の同意が必要)(民法第876条の9第1項、同第2項、第876条の4第2項) |
2.成年後見開始の審判等の申立ての手続 |
申立てをすることができる人 | |
① ご本人 ② 配偶者 ③ 4親等内の親族 1)親、祖父母、子、孫、ひ孫 2)兄弟姉妹、おい、めい 3)おじ・おば、いとこ 4)配偶者の親、子、兄弟姉妹 ④ 成年後見人等・成年後見監督人等 1)未成年後見人・未成年後見監督人 2)成年後見人・成年後見監督人 3)保佐人・保佐監督人 4)補助人・補助監督人 5)任意後見受任者・任意後見人・任意後見監督人 ⑤ 市区町村長 ⑥ 検察官 |
ご本人以外の者の申立てにより補助開始の審判をする場合、ご本人の同意が必要です(民法第15条第2項)。
(1)「診断書(成年後見用)」の作成
ご本人の主治医に「診断書(成年後見用)」及び「診断書付票」の作成を依頼します(必ずしも精神科の医師に依頼しなくても構いません)。一般的に、この診断書の内容(「後見相当」「保佐相当」「補助相当」)に対応する類型の申立て(後見・保佐・補助)を行うことになります。
「診断書(成年後見用)」及び「診断書付票」(東京家庭裁判所)【PDF】
「診断書作成の手引」(最高裁判所)【PDF】
(2)申立書類の作成
申立書類一式を作成し、戸籍謄本・住民票の写し・登記されていないことの証明書の交付申請を行い、必要書類を準備します。
「成年後見申立ての手引」(東京家庭裁判所)【PDF】
「必要書類チェックシート」(東京家庭裁判所)【PDF】
申立書類一式(東京家庭裁判所)【PDF】
(3)申立て
ご本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、申立てを行います。東京家庭裁判所では、事前に申立日の予約を行い、申立当日、申立人・成年後見人等候補者の面接を行います(所要時間:2時間程度)。申立後、必要に応じて、家庭裁判所による本人調査(本人との面接)・親族への照会、医師による鑑定などが行われます。申立てから審判がなされるまでの審理期間は、通常、1~2か月程度です。
管轄する家庭裁判所を調べる【裁判所のHP】
(4)審判後の流れ
審判後、2週間の即時抗告期間を経て、審判が確定し、家庭裁判所の嘱託により、後見登記がなされます。選任された成年後見人等は、就職後、1か月以内に、ご本人の財産を調査し、財産目録を作成しなければならないとされており、この「財産目録」「年間収支予定表」等を家庭裁判所へ提出してから、本格的に後見事務を行うことになります(民法第853条、第854条、第861条第1項)。
3.法定後見制度を利用するための費用 |
(1)申立時に必要な費用
費 用 | 備 考 |
収入印紙 3,400円 (申立費用800円) (登記費用2,600円) |
保佐または補助開始の審判の申立てとともに、代理権または同意権付与の審判の申立てをする場合、それぞれ800円を追加します。 |
郵便切手 2,980円(後見) 4,300円 (保佐・補助) |
東京家庭裁判所の場合。 内訳は「成年後見申立ての手引」を参照してください。 |
鑑定費用 5万円~10万円 |
鑑定を行う医師によります。「診断書付票」へ医師が記載した「鑑定料」の金額を準備することになります。 |
(2)成年後見(保佐・補助)開始後に必要な費用
成年後見人等の報酬 | 成年後見人等に、ご本人のご親族ではなく、行政書士・司法書士等の専門職後見人が選任された場合、成年後見人等へ報酬を支払うことになります。通常、成年後見人等が、年1回、家庭裁判所への報告とともに「報酬付与の審判の申立て」を行い、家庭裁判所が、ご本人の財産額、成年後見事務の内容等を考慮して、審判により報酬の金額を決定し、ご本人の財産の中からその報酬が支払われます(民法第862条)。 |
成年後見監督人等 の報酬 |
成年後見人等にご本人のご親族が選任された場合、家庭裁判所の職権により、併せて、成年後見監督人等が選任されることがありますが、この場合、成年後見監督人等へ報酬を支払うことになります。報酬の金額は、成年後見人等の報酬と同様、家庭裁判所の審判により決定されます(民法第852条、第862条)。 |
後見事務費用 | 成年後見人等が後見事務を遂行するうえで必要な郵送費・交通費等の実費を、随時、ご本人の財産の中から支出します(民法第861条第2項)。 |
「成年後見人等の報酬額のめやす」(東京家庭裁判所)【PDF】
「成年後見制度」とは
「任意後見制度」とは