おじいちゃんの遺言書を開けたらだめなの?!
「亡くなったおじいちゃんのタンスを整理していたら、遺言書が見つかった! 気になるから早く開けて読んでみよう」。と、お思いになったあなた、お待ちください!
ご家族の方でも、おじいさまがご自分で作成された遺言書を勝手に開封してはいけないのです。勝手に開封すると、罰として5万円以下の過料の処分を受けることがあるので注意しましょう。この場合、「おじいちゃんの遺言書をみんなのいるところで開けてください。そして、この遺言書がちゃんとしたものだとほかの人にも言ってください」ということを家庭裁判所に申し立てなければなりません(これを
「遺言書の検認手続きの申立て」といいます)。
この申立てをすると、家庭裁判所から「遺言書を開けるから相続人は来てください」という通知がきます。そして、指定された日に相続人全員が家庭裁判所に集まり、みんなの見ているところで遺言書が開封されます。そして、家庭裁判所が「これはおじいちゃんが作成した遺言書で、だれも書きかえていません」という証として、検認済みの証明書をつけてくれます。この
証明書と遺言書がセットになり、はじめてその後の相続手続で使える書類になります。
以上のような検認手続きが必要なのは、おじいさまがご自分で作成された遺言書(これを
「自筆証書遺言」といいます)の場合です。「公証人」という人に作成・保管してもらった遺言書(これを
「公正証書遺言」といいます)の場合は、公証人が「これはおじいちゃんの意思により作成された遺言書です。なぜなら、このわたしがおじいちゃんから話を聞いて作成したからです」と証明してくれたことになるので、検認手続きは必要ありません。
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亡くなった人の借金は返すな?!
「お父さんのお葬式のあと、お父さんの知り合いから『早く借金を返してほしい』って言われたから、とりあえずお父さんの預金から10万円だけでも返しておこう」。借金を返すのは当然のこと……ですが、この場合は少しお待ちください。お父さまが生きていらっしゃる間でしたら、あなたは、お父さまが借りていたお金について法的にはなんの関係もありません。でも、お父さまが亡くなり、一応、あなたはお父さまの
「相続人」になられたのですから、お父さまの預金や借金に関して慎重に行動していただかなければなりません。
「相続人になる」ということは、法的にお父さまに成り代わるようなものなので、預金や不動産が自分のものになるかもしれない代わりに、借金があればそれも返さなければならなくなるということです。「お父さんが残したものは借金しかないから相続人になりたくないんだけど」と思うときは、その旨を
家庭裁判所に言いにいけば、相続人ではなくなります(これを
「相続放棄」といいます)。ほかの相続人が何を思っているかにかかわらず、
自分だけ相続放棄をすることはできます。
「預金もいっぱいあるけど、借金もいっぱいあるみたい……。もし借金のほうが多かった場合に、わたしの貯金からそれを払わなければならなくなるのはいやだなぁ。借金を返すのは相続財産の中からだけにするってことはできないのかなぁ?」。大丈夫です、そういう方法を採ることもできます(これを
「限定承認」といいます)。でも、この方法は、
相続人全員で「限定承認にしよう」と意見が一致した上で、財産目録を作成し、
家庭裁判所に言いにいく必要があります。
「相続放棄」をするか、
「限定承認」をするか、どの方法を採るかを考える時間は、@お父さまが亡くなったこと、A自分がお父さまの相続人になったこと、を知った時から
3か月間しかありません(やむを得ない理由があって、どうしても時間が足りないときは、家庭裁判所に延長をお願いすることができます)。この間に何もしないと、普通に相続人になったことになります(これを
「単純承認」といいます)。
このほかにも、「相続人になる」とも「相続人にならない」とも言っていないのに、知らない間に普通に相続したことになってしまうケースがあります。それは、お父さまのもっていた高価な品物を売ってしまったり、お父さまの借金をお父さまの預金の中から返したり……、というふうに、お父さまの財産について、亡くなったお父さまに成り代わって(つまり相続人として)行動しているように見えるようなことをしたときです(品物が高価な場合は、「形見分け」も含まれるので注意しましょう)。
きちんとお父さまの預金や借金を調査して、相続放棄をするか、または相続人全員で遺産をどうするかを話し合うまでは、お父さまの遺産から借金を返すのは待ってもらったほうがいいでしょう。
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